日本とアメリカのサッカーやスポーツの環境

それでは、ここからは日本とアメリカの比較を聞きたいのですが、まずはサッカーに関して。アメリカの場合、たとえば地域によって白人主体、黒人主体、南米系主体、など様々ですよね。今までの対戦相手の印象はどうですか?

ーー そうですね、日本より各チームの特色があるので、人種ごとに固めているチームだったりすることもあるし。日本だとわりと最近はどこのチームもポゼッションしながらパスを繋ぐことが多いと思うんですけど、こちらではチームによっては守備を完全に固めてカウンター狙いだとか、そういう意味ではチームごとの個性がより濃く出ているかなと。レベルもマチマチですし、強いチームもあればそこまでじゃないというところもあるし。

これまで2シーズンで自分自身や日本人としての強みや、アメリカでこれは大変だな、というような部分は?

 ーー 今までやってきて、強みというのは技術ですかね。十分通用するというか、高いレベルで発揮できていると思うし、その逆にフィジカル面ではこちらのスタンダードより少し低いかなとも感じていて、そこが自分の課題でもあるし、だからこそ春のフィジカルトレーニングでいっそう取り組んだというのもあるんです。

その部分は日本に比べてスタンダードが高いですね。

それは試合中にも感じますか?

ーー 感じますね。まわりの高さが全然違うので。僕も181センチあるので日本だと割と大きい方ですけど、こっちだと全然そうじゃなくて、平均ぐらいなので。相手のフォワードと競り合う時などは、ボールが来る前にポジションを早く取るとか、体を先に相手にぶつけたりとか、工夫しながら、日本にいた時よりそういう部分を考えてやっているかもしれないです。普通にやったら敵わないような部分もあるので。

スピードに関しても、僕はサイドバックなので、相手のサイドの選手が黒人だったりするとすごく早い選手だったりして。日本にいた時と同じ間合いでやろうとすると一発でかわされちゃう時もあるので、間合いを意識しながら対人をやるようにしてますし、頭を使って対応するということですね。

そういう意味ではバックラインは大変ですね。

ーー はい、それに、アメリカの大学サッカーは交代が自由なので、すごく早い選手が少し休んで体力回復してまた出てくるというような場合もあるし。そういう場面は大変ですね、しっかりコントロールしないと。あとは、アメリカの大学リーグで特殊なのは、90分やって引き分けだったら30分のオーバータイムに突入したりとか、週に2試合で120分戦うこともザラにあるので、だからこそコンディション維持というのが大事になるんですよね。

 

フロリダ特有の、試合中に雷が鳴って中断というのもありますしね。

ーー 待って、待って、結局延期になるとか。それが負けている時なら良いですけど、2−0で勝ってたりしても延期で再試合ということもあったり。フロリダ以外ではなかなかないかもしれませんけどね。(笑) 

大学以外の、プロやユースのサッカーに関してはどんな印象がありますか?

ーー プロはMSLもすごく盛り上がってきて、レベルも上がっているというのはありますよね。ヨーロッパなどで全盛期を終えたような有名な選手たちもアメリカのリーグに入ってきて、アメリカのサッカーが盛り上がって、国としてサッカーにかける力が上がってきていると思うので、そういう状況で自分がアメリカでサッカーをできているというのは面白いというか。

 

この夏は日本でサッカーを見る機会はありましたか?

ーー Jリーグの試合やユースの後輩たちの全国大会の決勝を見に行ったりとか。日本のサッカーも面白いですね。FC東京のユースというのもあるかもしれませんが、技術的なレベルはすごく高いですね。体はアメリカに比べると全然小さいんですけど、足元の技術とかチームの組織とか、連携はすごくて、レベルがどんどん上がっていると感じましたね。

 

ところで、日本の大学はほぼ一年を通じて活動をする、一方でアメリカは一学期しかシーズンが無いわけですが、アメリカでプレーしている日本人として個人的に日米間の違いにどんな印象がありますか?

ーー 個人的には、日本はちょっとやり過ぎな気もしますし、アメリカは短すぎかなと。アメリカでは夏休みが長いから、チームとして活動できないのはチーム力の面ではマイナスかもしれないです。ずっとコンスタントにチームでやっている方が絶対にチーム力は上がるので。大学レベルに関してですが。

一概にどうだというのは難しいところですが、僕個人的には春はフィジカルの強化に重点を置いて、オフシーズンはそういう部分の狙いがあって設定されていると思うので、その期間に3、4ヶ月間みっちりトレーニングするとそれなりの効果も出てくると思うので、それはそれで良い策だとも思います。

 

 日本だとそんなに長く鍛えるという期間を設けられないと思うので、それはアメリカのひとつの良さであるし。まあ、日本とアメリカでメリットとデメリットがそれぞれはっきりあるというか。

アメリカのスポーツに関して全般的に自分が感じている魅力などはありますか?

ーー アメリカではチャンスがたくさんあると感じますね。本当に実力主義だと思うんです。それをしっかり評価してくれるというのもあるし。日本でよく「アメリカの大学は費用がいくらかかるの?」というのを聞かれるんですけど。

日本人がすごく疑問に思うことみたいなんですけど、そこがまだ日本では知られていないと感じるのですが、しっかりした競技力があれば返済しなくて良い奨学金がもらえるので、それを大学でかかる費用に充てながらスポーツに打ち込めるというのは素晴らしいシステムだと思うし、だからこそ世界中からチャンスを求めて選手たちが来るんだと思うし。 

そこは本当に魅力的だと思いますね。一年ごとの契約だし、プロでは無いけど頑張った分だけ評価されるし、結果が出なければ落とされる可能性もあるし。

奨学金が給料みたいなものですしね。

ーー 本当にそういう感じで、奨学金をもらって自分の好きなスポーツができるというのは良い事だし、だからこそ厳しい環境になるのは当たり前で、勉強ができなければ奨学金も止まるし、本当に文武両道というのがアメリカらしいですね。そこがすごく魅力的だと思います。

 

日本の後輩やアメリカの大学スポーツに興味がある人たちに、自分の経験に基づいてアドバイスをするとしたら、どんなことでしょうか?

ーー 僕が一番言っているのは英語ですね。スポーツの実力は通用しても、アメリカの大学で勉強していけるだけの英語力が無いと、入学もできないので、それが一番大事ですね。競技力というのも大事ですけど、英語力があってのものだとも言えるので。僕も英語が苦手なまま来たんですけど、日本で基礎を作っておくというは大事ですね。

あとは、日本も今後もっと国際化していくだろうし、スポーツに限らず英語を勉強しておくというのは必要だろうし、僕自身も英語を武器にして仕事をさせてもらったりもしているので。英語をやってきて良かったなと思うし、英語を勉強しておくというが第一かなと。

 

英語力もそうですし、アメリカは実力主義なので自分を売り込んでいかないとならないですし、色々と学ぶ事が多いですね。

ーー 本当にそう思います。自分を振り返ってみても、先々の事を考えた時に、アメリカに来たら得るものが多いかもしれないと感じましたし、特にサッカーや何か自分が高いレベルで頑張ってきたものがあるなら、それを活かすというのは良い事だと思います。

 

では、最後に締めの一言をお願いします。

ーー そうですね、残り1年半を自分自身すごく大事だと思っているし、将来プロでやれる可能性があるならそれも勝負していきたいし、同時に勉強もここからが勝負だと思ってるので。日本の家族や応援してくれている方々に良い報告ができるようにという気持ちです。

まだ自分は過程にいるので、サッカーを頑張って大学を卒業して初めて自分のやってきたようなこともオプションとしてあるんだよ、と説得力をもって話せると思うので、そうできるように自分自身頑張りたいです。

これからアメリカの大学サッカーに興味がある人たちにはお勧めするし、大変なのは当たり前だけど、それに見合う価値もあって、新しい事を学んだり色々な経験は絶対にできるので、もっと多くの人たちにアメリカの大学スポーツや生活などを知ってもらいたいです。

 

2015年、アメリカの大学で初めてのシーズンを過ごした時のインタビュー以来でしたが、サッカー、学業、生活の全てを真剣に考えて全力で取り組んでいる姿勢は努力の賜物だと感じました。今シーズンは更なるリーダーシップを発揮し、活躍してくれる事でしょう!